2013年8月15日木曜日

野外コンサートでのマナー

 私の兄が所属する合唱団が、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂付きジュリア聖歌隊500年祭に招かれ、サン・ピエトロ大聖堂で日本語による聖歌を歌うためバチカンを訪問することになった。その後でサン・ピエトロ広場での法王ミサにも参列する予定になっていたので、兄嫁、妹、姪も同行して一緒に参列したのだそうである。このイベントは、一部の新聞でも報じられていたからご存知の方もおられよう。

 以下は兄嫁が、私に語ってくれた話である。

 サン・ピエトロ広場での法王ミサの当日は、生憎の雨模様で傘を持ってはいたがずぶ濡れになってしまった。5月初旬のことでまだ寒い。法王の登場を待っている間に義姉はトイレへ行きたくなってしまった。トイレは広場の前方にあり、法王が通る通路の向こう側にあった。時間も迫っていたので衛視がその通路を横切るのを禁止したので通れない。仕方なく隙を見て渡ってしまった。帰りも同様に通してくれないので再び衛視の隙を付いて通過したのだそうである。

 その後で、合唱団関係の人にその話をしたところ、野外で合唱する人達は常におむつを着用しているのが常識ですよと諭されたのだそうである。知らなかったなぁ~。
 若者達に人気のあるグループの野外コンサートなどでは聴衆の方々もおむつを着用して参加しているのだろうか。知らなかった、知らなかった。
 おむつ着用で音楽を楽しむなんて、何ともほほえましい光景ではないか。彼らは将来、年寄りの身になって老人介護に当ってくれることであろう。

 マラソンや駅伝中継などを担当する放送関係者は、長時間の放送に備えておむつを着用するというのは知っていた。どうしても尿意を我慢できなくなったら、おむつの世話になるのであろう。私はまだ経験したことはないが。
 日本のおむつはすぐれた保水力を持っており、合唱団関係者の間では「4回は使える」ということになっているらしい。私は介護の経験もあるので、日本製おむつのすぐれた品質をよく承知していた。

 その時、義姉は私に聞くのである。おむつを利用するとなると「オシッコをした後どうなるか分かる?」
「?」
「重くなるのよ」
なるほど、それはそうだ。
 いや、待てよ 膀胱の中身がおむつの方に移動するだけだから重くなるはずはない。私はすかさず異議をとなえたのであった。
 尿意を我慢できなくなっておむつの世話になるのだから、一回の利用ではかなりの量のオシッコが出るはずである。それを4回繰り返すことができるというのだから、かなり強力な保水力を持っていると言えるであろう。

 ところで、5回目はどうなるのだろうか。「4回は可能」と限定したということは、5回目はうまくいかないということだろうか? どう、うまくいかないのか? 保水力の上限を越えてしまうのなら解決策としてオシッコをした後、素早くその場におむつをストンと落としてしまえばよいのではないか、などと私は無責任な想像をしていたのであった。

 しかし、それではマナーに反する。野外コンサートの終った跡におむつが沢山残されていたという話は聞いた事がないから、多分日本の若者達の礼儀作法は万全なのであろう。持ってきたものは、しっかりと持ち帰っているのだろう。
 どういう方法で持ち帰るのか、そこは私にも分からないが、さぞかし重い事であろう。私は「オシッコをした後のおむつは重くなる」という義姉の主張を理解できたような気がしたのであった。

2013年8月6日火曜日

“LINE”の発音とアクセント

 メールアプリの LINE が記録的な早さで普及しているらしい。しかも海外でも利用されていて、海外利用が全体の80%にも達するという。

 LINE は“ら(')いん”ではなく“らい(-)ん”と発音する(*)のだそうである。つまり、2文字目以降を平板に発音する。私は寡聞にして知らないのだが、LINE の製造元が決めたことではないと思う。普通アプリ製品は、その名前の発音の仕方まで規定するとは思えないからである。日本での初期の利用者(多分若者達であろう)が慣用的に用いた発音ではないかと思う。
【注】(*)ここで、
 (')は、直前の文字のみにアクセントを付ける。
 (-)は、直前の文字以降終りまでアクセントを付ける。

 若者言葉の発音は、2文字目以降にアクセントを移動させる例が多い。正確には“アクセントの平板化”と言うらしい。たとえば、
 彼氏(かれ(-)し)、クラブ(くら(-)ぶ)・・・
などが代表的なものである。
 市川海老蔵さんが傷害事件に巻き込まれた場所は“クラブ”(くら(-)ぶ)であり、倶楽部(く(')らぶ)とは異なる。アクセントは2文字目以降になり平板に発音する。NHKのアナウンサーはこれを正確に区別して発音しているのだそうである。ご苦労なことだ。

 箸(は(')し)、端(はし('))、橋(は(-)し)のような、同音異義語に新たな分野が加わったことになる。
 ところで私は思うのだが、若者言葉に現れるアクセントの平板化は、実は“橋”の発音アクセントと共通のものではないか。つまりアクセントの平板化と言うよりも、アクセントを一切無視しているのではないかと思う。

 その発音をよく聞いてみると、
 彼氏(かれ(-)し)は、彼氏(か(-)れし)
 クラブ(くら(-)ぶ)は、クラブ(く(-)らぶ)
と発音しているように私には聞こえるのである。

 つまり、若者言葉における発音・アクセントの変化は“アクセントの平板化”ではなく“アクセントの無視”ではないかと思う。

 最後に素朴な疑問を一つ。
 LINE の利用者の80%が海外の人だすると、彼らは“LINE”をどう発音しているのだろう。英語が主言語ならば「ラ(')イン」と発音しているのではあるまいか。
 もし“ら(-)いん”と発音しているのが日本人だけだとすれば、将来の日本人は英語の“直線”を意味する“line”も同じように“ら(-)いん”と発音するようになってしまうのではなかろうか。日本人は“r”と“l”の発音を区別するのが苦手だと言われているが「アクセントまでおかしい」と言われるようになるのかもしれない。心配なことである。