2020年6月17日水曜日

マイナンバーカード


・Knuhsの書斎 から転載

── 初めて使ったマイナンバーカード


 私がマイナンバーカードを手に入れたのは3年前(2017年)のことである。自動車の運転免許を返上して以来、自分には身分証明として使えるものが無くなってしまい何かと不便をしていたのでその代わりにしようと思ったのである。身分証明には健康保険証も使えるが、自分の写真が添付されていないので身分証明としては使えない場合が多い。その点マイナンバーカードは写真付きなのでどこでも使える利点があった。以来、映画館や美術展などに入場する際にはシニア料金を指定できるようになった。

 したがって、マイナンバーカードが謳っている高度な(?)利用の仕方など一度も経験したことがない。最初に新しいマイナンバーカードを受け取りに区役所へ行ったとき、あらかじめ用意されていたパソコン端末の前に座らされ、自分の暗証番号を初期設定させられたのを覚えている(*1)。その暗証番号を残念ながらこれまで一度も使うことなく今日まで来てしまった。確か、間もなく失効して使えなくなる筈である。
【注】(*1)このとき不思議に思ったのは、この暗証番号の初期設定では英字は大文字しか使えないと言われたことである。説明資料にはそんな制限は書いてなかったので反論したかったが、結局は担当者の指示にしたがうことにした。担当者の勘違いではないかと今でも思っている。これではセキュリティーのレベルが半減してしまう。
 そんなとき、新型コロナウイルスの感染が広がり特別定額給付金として10万円が受け取れるということになった。給付金を申請をするには、国から郵送されて来る書類に必要事項を記入して返送する方法か、あるいはマイナンバーカードを持っている人は、パソコン端末からオンライン申請する方法があるという。これだ! やっとマイナンバーカードを(本当の意味で)利用できる機会がやってきたのだ。ここで利用しないで何時利用するというのか?!

 そこで、私は市のホームページを調べてオンライン申請ができる日が来たら素早く申請を済ませてしまおうと考えた。国のやることは何でも時間が掛かるが、家のパソコンから申請手続きができるのならこんな便利なことはない。早く受け取りたければ自らも努力する必要があると考えたのである。

 そのための準備として、以前登録した暗証番号を記録してある文書(*2)を見つけ出して確認してみた。暗証番号には次の4種類がある。


(1)署名用電子証明書(英数字6~16桁)
     …… 文書が改ざんされていないことを確認するために用いる
(2)利用者証明用電子証明書(4桁)
     …… 利用者本人であることを確認するために用いる
(3)住民基本台帳用(4桁)   …… 住民票コードを利用するため
(4)券面事項入力補助用(4桁) …… 個人番号や基本4情報を確認、利用するため
【注】(*2)暗証番号の内、(1)と(2)はカード発行後、5度目の誕生日で失効となる。(3)と(4)はその後も使用可能だが、カード発行後10度目の誕生日でカード自体が失効となる。必要なら再発行を申請しなければならない(また手数料を取られるのかもしれない)。
 どの暗証番号を使うことになるのかは分からないが、とにかくすべて頭に叩き込んだ。市のホームページの関係する場所を、私は自分のパソコンで使っているブラウザ上に“ピン留め”して毎日そこをチェックしては申請できる日が来るのを今か今かと待ち続けた。そして5月10日になってようやく待ちに待ったオンライン申請が可能になったのである。朝一番でそれを知ったのだが、実際に使える時間は正午からであった。

 正午になって早速申請手続きのページを開くと、長々と続く説明を読まされることになった。申請に使うブラウザはこれ、またはこれを用意すること・・・、各々のバージョンはこれこれ・・・という具合である。あぁ、これは一括して外部に依頼して作らせたに違いない。パソコンに慣れている人ならいちいちソフトウェアの種類などには依存しない形で利用できるようにする筈である。全面的にパソコンに慣れていない人を対象に作っているからこういうことになる。例外的なことを説明するための部分がどんどん広がって益々深みにはまっていく。

 途中で説明を読むのを諦めて書類作成場所への入口を捜すことにした。やっとのことで入口にたどり着くとコンピュータやOSの種類毎に異なる入口が用意されていた。しかしそのそれぞれに必ず「ICカードリーダライタ(*3)」が必要と書いてある。ここで愕然とすることになる。そうなんだ、国が用意するシステムで公的なサービスを受けようとすると必ずと言ってよいほど特別な仕様の部品の購入を求められる。庶民は仕方なく買わされているが、私はそれを潔し良しとしなかった。自動車運転免許証 然り、ETCカード 然り、確定申告で使うe-Tax 然りである。私はこういう部品には手を出さない主義である。これではオンライン申請は諦めるしかない。
【注】(*3)ICカードリーダライタとは、ICカードに記録された電子情報を読むための機器である。公的な個人認証サービスでは、様々な機関に電子申請・届出等を行う際にマイナンバーカードに記録された電子証明書を利用して手続きを行う仕組みになっているらしい。
 オンライン申請を諦めた私は、家族と一緒の昼食を摂りながら申請手続きがうまくいかなかったと報告することになった。新聞等に掲載されていた広報にはICカードリーダライタが必要だとはどこにも書いてなかった(!!)、とぼやきながら。すると義息子が「ICカードリーダライタなら持っていますよ」と言う。彼は普段から確定申告はe-Taxを利用してやっていたのを思い出した。どうやらそれと同じカードリーダで済むらしい。
 早速そのICカードリーダライタなるものを借りることにして、私は何んとかオンライン申請の手続きを完了させることができたのである。

 その後聞いた話では、オンラインで申請された書類の方が処理に時間が掛かることが分かったのだそうである。オンラインで情報を受け取るまでは速かったかもしれないが、その後の処理が機械化されていなかったのである。その結果、人手によるチェックに膨大な時間を費やすことになったのであろう。その後しばらくして、このオンライン申請の窓口は閉じられてしまったそうである。昔ながらの紙による申請書類の方が組織の実態との相性が良かったのであろう。

 かくして、私の「初めてのマイナンバーカード利用」は無事終了したのであった。そして、初日に手早く申請した効果もあったのだろう、6月1日に給付金を受け取ることができたのである。ヤレヤレ。

 ところで、2020年9月からはマイナンバーカードを利用するマイナポイント事業が計画されていて、引き続きキャッシュレス決済が推進されるらしい(いや、本当のところはマイナンバーカードの普及の方が主なのであろうが)。その動向がどうなるのか気になるが、当面はマイナンバーカードを持っていることにしようと思う。しかしカードが失効する2026年の誕生日までには、再発行してもらうかどうかを慎重に決めなければと考えている。