2017年10月31日火曜日

私の本棚(5):サトウハチロー



・ブログ( ドッと混む・Knuhsの書斎 )から転載


── サトウハチロー


私の本棚を紹介します。第5回は、
を取り上げます。


 サトウハチローと言えば、詩人、童謡作家、あるいは小説家として知られていますが、少年少女向けの小説家というのが私の印象です。しかし私の本棚にはここで紹介する詩集「おかあさん」しか置かれていません。サトウハチローの少年少女向けに書かれたユーモア小説は、ほとんど少年少女雑誌に連載される形で読まれていたからです。

 名前は、サトウ・ハチローと書かれる場合もありますが、本人はサトウハチローと表記していたようです。以下に示すように、子供の頃からよく見慣れている独特な字体です。

 
本人の書いた(と思われる)サイン



サトウハチロー



 この本は、実は3冊から構成されているのです。



(1)詩集 おかあさん(Ⅰ)
(2)詩集 おかあさん(II)
(3)詩集 おかあさん(III)
 詳細は【解説欄】を参照してください。



【解説欄】
▼「詩集 おかあさん」の不思議
 「おかあさん」の詩集全集は、外函の豪華さに比べ内容の3冊はかなり質素な装丁になっています。どちらかと言うと“不釣り合い”と言ってもいいくらいです。各冊の版数はすべて異なっていて、(1)は287版、(2)は232版、(3)は222版となっています。
 最初の詩集(1)が一番よく売れて(2),(3)と次第に発行部数が落ちるのはよくあることだと思います。これは(2),(3)がかなりの数売れ残ったので、後から函入りの本を発行して(2),(3)をまとめて売りさばき、全体の発行部数の数合わせしたのではないかと推測されます。

 なお、サトウハチローの全作品の一覧は、国立国会図書館デジタルコレクションから“1953年”のデータを参照すると分かります。少年少女向けの小説もすべて網羅されているようです。ただ、タイトルだけで、内容は個々の本に当たらねばなりません。

 たとえば、手持ちの(4)少年クラブ(昭和28年4月号)の目次の一部を以下に示します。

少年クラブ(昭和28年4月号)


4月号の目次


 ここに、写真小説「少年6君」という作品が載っています。挿絵がすべて写真になっている点が斬新ですね。
 
 
(5)少年クラブ(昭和28年7月号)では、

少年クラブ(昭和28年7月号)

 
 以下に示す目次から、少年詩「ちょうちょうの歌」が掲載されていることが分かります。


7月号の目次


 その「ちょうちょうの歌」の全文を以下に示します。


「ちょうちょうの歌」の全文


▼本の詳細
(1)詩集 おかあさん(I):昭和37年5月18日発行, 昭和42年6月30日 287版 定価 350円 サトウハチロー著 鈴木信太郎絵 株式会社 オリオン出版社

(2)詩集 おかあさん(II):昭和37年5月18日発行, 昭和42年6月30日 232版 定価 350円 サトウハチロー著 鈴木信太郎絵 株式会社 オリオン出版社

(3)詩集 おかあさん(III):昭和37年5月18日発行, 昭和42年6月30日 222版 定価 350円 サトウハチロー著 鈴木信太郎絵 株式会社 オリオン出版社

(4)少年クラブ:昭和28年4月号 第四十巻第五号 定価 98円 株式会社 大日本雄弁会講談社

(5)少年クラブ:昭和28年7月号 第四十巻第八号 定価 95円 株式会社 大日本雄弁会講談社





2017年10月24日火曜日

アストロドームの思い出


・ブログ( ドッと混む・Knuhsの書斎 )から転載


── アメリカ人の発想のスケール


 ヒューストンのアストロドーム(Astrodome)で行われていたアメリカン・リーグ優勝決定シリーズ第7戦で、ヤンキースは0-4でアストロズに敗れてしまった。今年は、これでもう田中投手の応援も店じまいということになる。残念である。

 しかし私にとっては、テレビ画面でアストロドームでの試合風景が眺められるので、もうしばらくの間昔の思い出にひたる時間が与えられたことになる。実は、1982年のNCC(National Computer Conference)に参加したのだが、その会場がアストロドームだったから、私にとって懐かしい場所なのである。


アストロズの記念キーホルダー

 アストロドームは1962年に世界初の多目的ドームとして作られた。東京ドームができたのが1988年であるから、日本にはまだ屋根付きの野球場などなかった時代である。NCCの行事に参加しながら、昼休み時間に同じ建屋内にある「屋根付き野球場」なるものを生まれて初めて見ることができた。フィールド上では何も行われていなかったが、内野席に座ってランチを食べながらその威容を隅から隅までじっくりと観察することができた。そして、それを造ったアメリカ人の発想の大胆さと実行力にただただ敬服したのであった。


当時のアストロドーム

 ヒューストンは雨の少ない場所なのに、なぜ「屋根付き球場を建てよう」などという発想が生まれたのか、私は不思議で仕方がなかった。聞くところによると、彼らテキサスの人々は冷房の効いた涼しいところでベースボールを楽しみたかったのだそうである。なるほど、そういうことなのか。
 快適さを追究するために、典型的な野外スポーツであるベースボールを(その伝統を破って)屋内で楽しむという大胆な発想の転換をはかったのである。

 先日行われた日本のクライマックスシリーズでは、悪天候のもとで文字通りの“泥仕合”が展開されていた。泥まみれでプレイする選手たちが気の毒になる程であった。ああいう場面を見せられると誰しも屋根付きの野球場がほしいと思う。しかし夏の甲子園球場で、炎天下のきびしい環境のもとプレイする高校球児たちを見ても「屋根付きの野球場がほしい」という声はついぞ聞いたことがない。日本では涼しさという快適さはあまり重視されないように見える。

 試合の条件を余り劇的に変えてしまうと面白くなくなると言う人が多いからであろう。伝統を重んずるスポーツでは、同じ条件下で戦った記録のみがお互いに比較する上で意味を持つからである。しかし最近は、野球のルールも変更されるようになってきた。特に選手が怪我をする可能性のある状況をできるだけ避けるため、ルール変更で厳しく制限されるようになってきている。当然、試合環境の方も改善されていくべきであろう。

 亜熱帯化しつつある日本の気候では、野球の試合中に熱中症で倒れる観客や選手が出てくる可能性が考えられる。そうならない様、今から対策すべきではなかろうか。そろそろ甲子園の高校野球も、屋根付き野球場で行うよう改変されたらどうであろう。観客も選手たちも、それぞれ快適な環境で野球を楽しめるようにしてほしいものである。

2017年10月20日金曜日

私の本棚(4):アラビアン・ナイト


・ブログ( ドッと混む・Knuhsの書斎 )から転載

── アラビアン・ナイト


 私の本棚を紹介します。


 第4回は、アラビアン・ナイトを取り上げます。


 アラビアン・ナイトの全集で、全5巻から成ります。右から順に、

(1)アラビアン・ナイト1「黒檀の馬」、
(2)アラビアン・ナイト2「蛇の女王」、
(3)アラビアン・ナイト3「シンドバードの航海」、
(4)アラビアン・ナイト4「アラディンと魔法のランプ」、
(5)アラビアン・ナイト5「アリババと四十人の盗賊」、

となっています。

 この本は、実は知人からプレゼントされたもので、函入りの見事な装丁のものです。ときどき取り出しては美しい挿絵を見たり、適当に拾い読みしたりすることが多いです。

 読んでいると、物語の中で登場人物が物語を語り始めます。その物語の中の別の登場人物がまた別の物語を語り始めます。物語が何重にも入れ子になっていて、何が何やら分からなくなってきます。こういう書き方を枠物語(*1)と言うのだそうですが、拾い読みするのが一番気楽に読めるような気がします。
【注】(*1)枠物語(わくものがたり:frame story)とは、より小さな物語を埋め込んだ入れ子構造の物語のこと。つまり、導入的な物語を「枠」として使うことによって、ばらばらの短編群をつないでいく技法です。




【解説欄】

▼『アラビアン・ナイト』1「黒檀の馬」
 この本は、東洋文庫(71)前嶋信次訳版『アラビアン・ナイト』1から、「シャハリヤール王とその弟君の話」、「荷担ぎやと三人の娘の物語」を、同(339)『アラビアン・ナイト』9から、「黒檀の馬の物語」を選んで収めたものです。


アラビアン・ナイト1「黒檀の馬」の函 (はこ)と見開き



「黒檀の馬」の挿絵


▼『アラビアン・ナイト』2「蛇(くちなわ)の女王」
 この本は、東洋文庫(388)前嶋信次訳版『アラビアン・ナイト』11から、「蛇の女王の物語」を選んで収めたもの。



アラビアン・ナイト2「蛇の女王」の函と見開き扉の挿絵



▼『アラビアン・ナイト』3「シンドバードの航海」
 この本は、東洋文庫(399)前嶋信次訳版『アラビアン・ナイト』12から、「海のシンドバードと陸のシンドバードとの物語」を、同(290)『アラビアン・ナイト』8から、「ものぐさのアブー・ムハンマドの話」を選んで収めたもの。



アラビアン・ナイト3「シンドバードの航海」の函と見開き扉の挿絵


▼『アラビアン・ナイト』4「アラディンと魔法のランプ」
 この本は、東洋文庫・前嶋信次訳版『アラビアン・ナイト』別巻(未刊)の「アラーッ・ディーンと魔法のランプの物語」を収めたもの。



アラビアン・ナイト4「アラディンと魔法のランプ」の函と見開き扉の挿絵


▼『アラビアン・ナイト』5「アリババと四十人の盗賊」
 この本は、東洋文庫(290)前嶋信次訳版『アラビアン・ナイト』8から、「カリフ、ハールーン・アル・ラシードと、にせカリフ(または第二のカリフ)との物語」、「アリー・シャールと、ズムッルドとの物語」、同『アラビアン・ナイト』別巻(未刊)から「アリババと四十人の盗賊の物語」を選んで収めたもの。



アラビアン・ナイト5「アリババと四十人の盗賊」の函と見開き扉の挿絵



「アリババと四十人の盗賊」の挿絵


▼本の詳細
(1)『アラビアン・ナイト』1「黒檀の馬」:1984年2月17日, 初版第1刷, 前嶋信次 訳, 平凡社, \1,800

(2)『アラビアン・ナイト』2「蛇(くちなわ)の女王」:1984年3月10日, 初版第1刷, 前嶋信次 訳, 平凡社, \1,800

(3)『アラビアン・ナイト』3「シンドバードの航海」:1984年11月18日, 初版第1刷, 前嶋信次 訳, 平凡社, \1,800

(4)『アラビアン・ナイト』4「アラディンと魔法のランプ」:1984年11月18日, 初版第1刷, 前嶋信次 訳, 平凡社, \1,800

(5)『アラビアン・ナイト』5「アリババと四十人の盗賊」:1984年3月10日, 初版第1刷, 前嶋信次 訳, 平凡社, \1,800