2018年4月30日月曜日

私の本棚(21)絵物語:小松崎 茂の世界


・ブログ (ドッと混む・Knuhsの書斎) から転載

── 小松崎 茂の世界「ロマンとの遭遇」


 私の本棚を紹介します。


 第21回は、小松崎 茂の世界を取り上げます。


 今回取りあげる本は、小松崎 茂の世界「ロマンとの遭遇」の一冊だけです。


【解説欄】

▼小松崎茂の世界
 昔、日本中の少年たちが冒険と空想の世界に魅せられ、日々胸躍らせていた時代がありました。漫画絵物語の全盛時代(1950(昭和25)年頃から)があったのです。

 ここで絵物語というのは、物語の文章部分とがはっきりと関係付けられていて、単なる挿絵小説とは異なる形式がとられていました。特に絵は、精密に描きこまれた迫力ある写実的なもので構成されているのが特長でした。山川惣治小松崎茂の作画によるものが最も人気があったと記憶しています。

 以下に、絵物語の例を示します(私の昔の資料から)。


 ( 平原王-2 )     ( 平原王-1) 


 後に、漫画が“マンガ”となり“劇画”ブームが到来すると、気が付くと絵物語というジャンルはいつの間にか消えていました。漫画とマンガ絵物語と劇画の違いについては諸説ありますので、ここではこれ以上深入りはしません。

 そして1990年(平成2年)の初頭だったと思いますが、突然 新聞広告で『小松崎 茂の世界「ロマンとの遭遇」』の発売予告が出現したのです。偶然これを見つけた昔漫画少年の私めは、突然目覚めたように絵物語の時代を思い出し、すぐさま購入することにしたのです。

小松崎 茂の世界「ロマンとの遭遇」
 小松崎茂の作品は、少年向けの月刊誌に発表されるのが普通でしたから、まとまった作品は私の手元にはほとんど残っていません。ただ、昔買った少年向けの雑誌の一部が保管されているのでその中に見ることができるだけです。

 それと比較して、手塚治虫の作品(*1)が手元に沢山残っているのは、実は例外的なことだったのだと実感しています。
【注】(*1)私の本棚(1):「手塚治虫ワールドのすべて」の手塚治虫漫画全集参照。
 インターネットで調べたところ、私の持っているのは初版(1990年4月2日発行)で、その後表紙の異なる版が 2006年3月になって発行されているようです。


以下の絵は「カバーの表表紙」と「カバーの裏表紙」です。


( カバーの表表紙 )



( カバーの裏表紙 )


以下の絵は、カバーを外した本体の方です。「本体の表表紙」と「本体の裏表紙」です。全面青色になっているので見栄えがしません。そこで色調を自然なものに変えてみました。それが緑で枠取りされた最初の画像です。


( 本体の表表紙 )


( 本体の裏表紙 )


以下の絵は、目次の前にある「」の絵です。


( 扉 )


以下は「目次」です。


( 目次 )


以下の絵は、先に表示した「本体の表表紙」の絵ですが、色調を変更しています。

 小松崎茂の絵は多くは戦災で焼失したと言われています。この絵も過去の出版物から復元したものではないかと思われます。詳細に見ると縦に2本の線が入っているのが分かります。大型の口絵を折り畳んだ跡ではないかと思います。折れ目の線の目立つところを補正したように見えるのです。その証拠に2つのサインが記されているからです。1つは1951年の原画作成時のサイン、もう1つは1990年の修正時のサインと解釈するのが妥当でしょう。


( 本体の表表紙 )
(色調を変更)


以下の絵は、本体の表表紙から「ハリケーン・ハッチ」の絵だけ抜き出したものです。私が最も気に入っている絵です(色調を変更しています)。本体の表表紙は、こういう色調で発行して貰いたかったですね。


( ハリケーン・ハッチ )
(色調を変更)


その他、代表的な絵を紹介します。


 ( 地球SOS ) 



 ( なつかしのペン画 ) 



( 大平原児1 ) ( 大平原児2 ) ( 大平原児3 )



 ( 口絵:大和と武蔵 ) 



 ( 宇宙戦艦ヤマト ) 



 ( 勇者ラディーン、ゲッターロボ、ゼロテスター ) 


●著者:小松崎茂氏です。
 小松崎茂氏は、活躍していた当時はほとんど顔写真を公開していなかったように思います。私はこの本で初めて著者の御尊顔を見ることができました。感激です。


小松崎 茂      晩年の写真
(「ロマンとの遭遇」から引用)         



▼小松崎茂のサインについて
 ここで、小松崎茂のサインについて触れておきます。

 「ハリケーン・ハッチ」のところで触れたように、この絵には小松崎茂のサインが二つ記されています。一つの絵に二つのサインがあるのは珍しいことです。そして小松崎茂のサインには、必ず描いた年が付加されています。これは彼が画家だからであって、普通は日付を加えたりはしないと思います。

 私は、小松崎茂のサインを初めて見たとき、その迫力あるサインに驚きました。素晴らしいサインだと思います。成る程サインとはこのように書くものなのかと思い知り、これを真似て自分専用のサインをデザインしたのを覚えています。学生時代はそれを使っていましたが、仕事に就いて海外出張したりアメリカに住むようになってからは、もっと簡便なものに変えてしまいました。

 実生活上で、あるいは仕事上でサインを多用するようになると、複雑でサインするのに時間が掛かるものより素早くサインできるものの方が良いに決まっています。また、自分のサインを他人に真似されたくなかったら簡単なものの方が真似され難いのです。余り複雑なサインは避けた方がよいということを学びました。

 最近、トランプ大統領が「大統領令にサインする儀式」をこれ見よがしにやっていますが、あれは自分を必要以上に重々しく見せるためのもので、こけ脅しのためのサインであるとも言えます。普通に使うサインは簡便なものに限ります。


 ( 小松崎茂のサイン:1951年 と 1990年 ) 



・小松崎茂のサイン、いろいろ
 小松崎茂のサインには、大雑把に言って 3種類くらいのタイプがあるようです。


( 1953年 )      ( 1953年 )  


( 1953年 )       ( 1953年 )  


 ( 1954年 )       ( 1954年 )


    ( 1954年 )   ( 時期不明 ) 



▼本の詳細
(1)小松崎 茂の世界 「ロマンとの遭遇」:1990年3月20日印刷, 1990年4月2日発行, 根本圭助 編, 定価3,800円(本体3,689円) 国書刊行会発行




















































2018年4月26日木曜日

私の本棚(20):風景画を描く


・ブログ (ドッと混む・Knuhsの書斎) から転載

── 風景画を描く


 私の本棚を紹介します。

 第20回は、風景画に関する本を取り上げます。


 上掲写真で、右から順に、
(1)「Cincinnati Scenes」、
(2)「歌の絵本Ⅱ」-- 世界の唱歌より --、
(3)「風景画を描く」、
(4)「台湾小景『街道をゆく』スケッチ集」、
(5)「ヨーロッパの街から村へ」、
(6)「水彩画プロの裏ワザ」、
(7)「水彩画プロの裏ワザ PART2」
となっています。以下、【解説欄】で順に紹介することにします。


【解説欄】

▼風景画を描きたい
 私は昔から、暇ができたら絵を描きたいと思っていました。しかし本格的に勉強しょうと思ったわけではありません。本屋で絵の本を見つけると、自分の好みに合うものだとすぐ買い込んでしまうのです。

 そうやって買い集めたものの中から、風景画に関係するものだけを選んでみました。


▼「Cincinnati Scenes」
 アメリカの女優キャロライン・ウィリアムズ(Caroline Williams, 1957-3-27 ~ )が描いたシンシナティの風景画を集めた本です。シンシナティ(Cincinnati)は、アメリカのオハイオ州南西端に位置する都市です。


( 表紙 )

 私の書庫になぜこの本があるのか なかなか思い出せませんでした。シンシナティに行ったことはあるのですが、本屋で購入した記憶がないのです。裏表紙に私のサインと“ '75-7-11”という日付が書いてありますから、多分これが入手した日なのだろうと思い古い手帳で調べてみることにしました。

 シンシナティにはこの時期 1ヶ月程“グリーンベレー(*1)”の仕事で出張したことがあるのです。手帳の記録によれば、6月12日から7月12日までシンシナティに滞在し、それからアリゾナ州のフェニックスへと移動していることが分かりました。

 多分、その前日の11日にシンシナティでの仕事が終り、顧客の会社の人達と別れた際にプレゼントされたものではないかと思われます。客人にシンシナティという場所を知ってもらいたい、という熱意が感じられるのです。私の仕事振りに満足してもらえた証しであると勝手に解釈しています。
【注】(*1)グリーンベレーとは、緑色のベレー帽のことでアメリカ陸軍特殊部隊の通称ですが、コンピュータ業界では、特殊な用語として使われています。重要顧客でトラブルが発生したとき、問題解決のために派遣される特殊部隊を意味するのです。あるいは、そのような仕事に派遣することを指すこともあります。
 
( The Canal at Metamora )       ( Elgin Place )  



( Baymiller Street ) ( Corporation Alley ) ( Dayton Street )



▼「歌の絵本Ⅱ」-- 世界の唱歌より --
 この本は、編者・芥川也寸志が選んだ世界の唱歌(30曲)に、詩情あふれる絵を安野光雅画伯が添えたもので、先に発行された「歌の絵本(日本の唱歌より)」の続編として制作されました。

 巻末に、全30曲の楽譜も付いています。


( 表紙 )



( ロンドンばしがおっこちる )



( 野なかの ばら )



( うつくしき )      ( アマリリス )



NHK 趣味百科 安野光雅「風景画を描く」
 1995年1月~3月にNHK教育テレビで放映された NHK 趣味百科「安野光雅 風景画を描く」のテキストを単行本化したものです。安野光雅画伯が、イギリス,フランス,イタリアの各地を回って、自然や町並みの風景を描いた絵、その時の写真、エッセイなどが記録されています。

 私は、放映された13回の番組内容をほぼすべてビデオに録画して持っていますが、そろそろDVD化して保存しないといけない時期になっています。


( 表紙 )



( 第4回 風景の走り描き )



( 第11回 フランスの古い街 )



▼「台湾小景『街道をゆく』スケッチ集」
 この本は、司馬遼太郎著『台湾紀行』(街道をゆく・四十)の装画として、安野光雅画伯が台湾の現地に取材したときのスケッチを集めたものです。

 その大半は1993年7月2日号より1994年3月25日号まで『週間朝日』に連載され、後に単行本として出版されましたが、ここでは、更に収録されなかったものも加えて、淡彩を施したり、取捨選択して説明文を追加したりと再編集したものです。


( 表紙 )



 ( 天后宮媽祖廟 )  ( 台北 農暦遊街 ) ( 台北 林森南路の廃寺 ) 


▼「ヨーロッパの街から村へ」
 これは、1998年の『週刊朝日』の各号の表紙を飾った絵を集めたものです。安野光雅画伯が、ヨーロッパ(イタリア、クロアチア、ハンガリー、オーストリア、フランス、スペイン、オランダ、トルコ、イギリス)の街から村へと編集担当者と一緒に歩いて描きためたものを単行本化したものです。


  ( 表紙 )  



  ( 中表紙 )  


 
イタリア          イタリア
  ( 花の聖母寺 )      ( 露店の古本屋 )  


 
フランス        オーストリア
    ( 南フランスの田舎 )   ( ハイウェイの休憩所より )  



▼「水彩画プロの裏ワザ」
 水彩画の描き方を学ぶならこの本ですね。プロの画家(奥津国道画伯)が、その手法を懇切丁寧に、まさに惜しげもなく紹介してくれています。

 どういう手順で描いていくかを学ぶと、絵は観察技術の積み重ねであることが分かります。風景画に欠かせない空、樹木、建物、山、川や海などの素材の描き方が解説されていますが、そういった基本的なテクニックを学ぶと、絵を描くのもコンピュータプログラムを作るのも、根は同じだなぁと感ずることがあります。


  ( 表紙 )  



  ( 川辺の樹木の描き方 )  




  ( 遠近法の描き方 )  



▼「水彩画プロの裏ワザ PART2」
 前作「水彩画プロの裏ワザ」の反響が大きかったそうで、その読者の質問、要望等に応える形で続編を書くことになったそうです。前作では物足りなかったところをより深め、紙幅の関係で紹介できなかった技法を紹介しています。大切なポイントは手元のアップを見せながら解説しているのでよく分かります。

 基本的な色の出し方が紹介されているなど、成る程と感心するところが多いです。私にとっては後編の方が役立ちそうですね。


  ( 表紙 )  



  ( 水辺のある風景の描き方 )  



  ( 逆光の水面の描き方 )  



  ( パステル系の使い方 )  



▼本の詳細
(1)「Cincinnati Scenes」Sketches by Caroline Williams:Copyright (c)1962,1968 by Caroline Williams, LANDFALL PRESS,INC.

(2)「歌の絵本Ⅱ」-- 世界の唱歌より --:1979年5月24日 第1刷, 芥川也寸志・編, 安野光雅・絵, 講談社 \1,100

(3)NHK 趣味百科 安野光雅「風景画を描く」:1995年7月1日 講師 安野光雅, 日本放送出版協会, \1,000(本体971円)

(4)「台湾小景『街道をゆく』スケッチ集」:1995年5月1日 第1刷発行, 安野光雅, 朝日新聞社, 定価2,000円(本体1942円), ISBN4-02-256861-5 C0071

(5)「ヨーロッパの街から村へ」:1999年9月5日 第1刷発行, 安野光雅, 朝日新聞社, 本体2,800円+税, ISBN4-02-258658-3 C0071

(6)「水彩画プロの裏ワザ」:2002年5月20日 第1刷発行, 2002年12月2日 第10刷発行 奥津国道, 株式会社講談社, 本体2,000円(税別), ISBN4-06-268369-5 C0071

(7)「水彩画プロの裏ワザ PART2」:2004年3月12日 第1刷発行, 奥津国道, 株式会社講談社, 本体2,000円(税別), ISBN4-06-268392-X C2071