2020年2月29日土曜日

変な日本語表現(その2)


・Knuhsの書斎 から転載

── 昨年の流行語大賞 ONE TEAM


 昨年の流行語大賞を覚えていますか?
 あれ程話題になったのに、年が変わるときれいサッパリと忘れ去られてしまうのが例年の流行語大賞である。しかし今年は違った。2019年度の新語・流行語大賞の中でも年間大賞に選ばれた「ONE TEAM」は、年が明けても記憶に残っていて、よく使われているようだ。

 1 ONE TEAM
 2 計画運休
 3 軽減税率
 4 スマイリングシンデレラ/しぶこ 
 5 タピる
 6 #KuToo
 7 ○○ペイ
 8 免許返納
 9 闇営業
10 令和
表:昨年の「新語・流行語のトップ10

 春となりスポーツの季節になると、再び「ONE TEAM」というキャッチフレーズを耳にするようになった。団体スポーツでは「チームワーク」とか「野球チーム」のように使い勝手の良い便利な言葉だからであろう。「チーム」というのは今や立派な日本語(*1)になっている。
【注】(*1)チームワーク、野球チーム、チームゲーム、
     チームスピリット
 しかし英字で“ONE TEAMワンチーム”(ワンチーム)と表現されると、私は一言異議を唱えたくなってしまうのだ。
 周知の通り“team”の正確な発音は【ti:m】であるから、このつづりを見ると私は反射的にどうしても「ティーム」と発音したくなってしまう。

 “team”を「チーム」と発音したのでは、海外で英語で話す場面ではまるで通じない。お粗末な英会話力で苦労してきた私には、苦い思い出しか浮かんでこないのである。

 日本では、外国語の単語をカタカナ表記して、あたかも日本語の用語のように使う便利な表現法がある。その用語の日本語訳が存在しない場合には、この手法を使ってどんどん新しい用語を取り込んでしまえば良いのだから便利である。立派な日本語訳があっても、あえてカナ表記の方を使う人がいるくらいだから余程この手法の使い勝手が良いのであろう。しかも読むときは日本語的発音になっているから、それが英語でも同じ発音で通じると勘違いしてしまう人が多い。この結果、変な日本語表現が増えていくのであろう。

 我々日本人が普段の日本語で会話をしているとき、その中に突然巻き舌で発音する英語の用語が混じったりすると、何か奇異な感じを与えてしまうものである。余程の英語の達人が使ったのなら別だが、そうでない限り気取っているようで不自然に聞こえてしまう。私のような英語の下手な者がしゃべるとキザに聞こえるに違いない。

 だから私は、日本語の会話では常に「チーム」と発音することにしている。「チーム」というのは、もはや日本語の用語になっていますからね。しかし英会話の中で使う場合“team”は「ティーム」と発音するよう抜かりなく切り替えることが求められる。こういう切り換えをしなければならないから、日本人は何時までも英会話力が身に付かないのかもしれない。

 ラグビーのワールドカップで活躍した日本チームは、「ONE TEAM」というキャッチフレーズの生みの親であるが、その中の外国生まれの日本選手たちも全員日本流に「チーム!」と発音していたようだ。これは、私にとっては予想外のことであったが「郷に入れば郷に従え」ということで、彼らは日本チームの一員になりきろうと涙ぐましい努力をしていたのかもしれない。大和魂を身に付けるためには、発音の些細な違いなど気にしてはいられなかったのであろう。

 同じような発音の間違いは、いたるところで見ることができる。
 “Mailメイル”は「メール」と発音されている。これに従うと“Mailerメイラー”は「メーラー」となって、いかにも日本的な雑な発音になってしまう。
 アカデミー賞(Academy Awards)というときの“Awardアウォード”は「アウォード」と発音すべきだが、多くの人は「アワード」などと発音している。

 “賞”とか“大賞”という立派な日本語があるのに、あえて英語を使いたがるのは何故なのか。テレビやラジオのアナウンサーが繰返し「アワード!」と叫んでいるのを聞くと私は恥ずかしくなってくる。欧米人がこれを聞いたら何んと理解するのだろう。

 「アワード」が、将来日本語として採用されるのかと思うと悲しくなる。一度英語の辞書を引いて正確な発音を調べてみることをおすすめしたい。