2013年10月31日木曜日

仕事に対する責任感

 今年は大型の台風が多かったが10月の後半に入りやっと台風の季節も終ったようである。
 台風26号が関東地方に接近した時には大学の授業が休講になるかどうかの騒ぎになった。幸いにも関東地方は直撃をまぬがれたが、その影響で午前中の授業はすべて休講となってしまった。私の担当科目は午後だったので休講とはならなかったが、それでもいつもより学生の出席率は悪かったようである。
 会社員の場合、最近はこういう非常時には無理に出社したりせず在宅で仕事をする人が増えてきているから、学生達も同じように無理して出席することもないと考える人が増えたのであろう。

 私が会社勤めをしていた頃は、台風や交通ストなどで出社に影響するような事態になると、普段以上に頑張って出社しようと努力したものである。仕事に取り組む姿勢や責任感を誇示するには絶好の機会だった。特に大切な会議が予定されているような場合は、意地でも遅刻しないよう最大限の努力をするのがサラリーマンとしてのマナーであったような気がする。つまり、その程度のことでしか自己表現ができない社員ばかりだったとも言えるのだが。

 昔、T社とN社の合弁会社に出向していたことがあった。T社からN社へ技術移転をするのが目的だったから、両方の親会社からかなりの人数の技術者(取締役クラスも含めて)が出向して一緒に仕事をしていたのである。
 ある時、全国的な交通ストライキがあり、我々T社から出向している社員達は当然のごとく、定時に仕事が始められるようあらかじめ準備しておくことにした。T社ではそれが普通だった。
 交通手段のない者は全員寝袋を用意したり布団を借りたりして前日から会社に泊まり込んだのである。翌日T社出身の社員は全員、何事もなかったかのように朝一番から普段通りに執務していた。

 その時、N社から出向していた幹部(取締役)が社員の出社状況を確認しようと各職場の見廻りにやってきた。そして、T社のエリアでは全員がそろって普段通り執務しているのを見て「何だ、これは!」と驚嘆することになった。それに反しN社の社員がいるエリアはガラ空きだったのであろう。これは社風の違いかもしれないが、社員の仕事に対する姿勢、責任感、意気込みの違いを見せつけられたと感じたのではないかと思う。T社の一員として私は溜飲を下げたのであった。

 当時は、こういったことが 仕事に対する責任感 があるかどうかを知る指標の一つになっていたのである。最近は誰でもモバイル機器を持っているし、在宅に限らず何処に居ても仕事をすることが容易になっているから、必ずしも仕事に対する責任感の有無を判別する指標とはならなくなってきている。結構なことではないか。