2015年4月17日金曜日

目覚し時計

★本記事のリライト版を、ホームページ上に
目覚し時計 ── 古い物の価値を見直す
として掲載しました。(2015-5-1)

私の寝室には古い目覚し時計が置いてある。貰い物なので、それがどの位の価値の物なのか今まで関心を持つこともなく、ただ使い続けてきた。すこぶる使い勝手が良くて私は大変気に入っている。
 夜中にふと目覚めたとき「今、何時頃かな?」と思うことがよくあるが、そんな時そっと手を伸ばして時計の上部に軽く触れると『4時12分です』などと女性の声で報せてくれる。アラームのオン/オフなどは手探りで簡単に切り替えられるから、就寝前に設定し忘れたことに気がついたとしても(半分眠りながら)直すことができたりする。1分間隔で連続して時間を報せる機能もあるから、昼間でもいろいろな利用法が考えられる。「おぬし、なかなかやるのう」という感じの存在なのである。

 まあ、こういった機能は大抵の目覚し時計には装備されているから別に驚く程のことではない。私が驚いたのは、これだけの機能があり しかも一日に何度も女性の声で喋らせて酷使しているのに、電池の消耗が極端に少ないことである。ここ4~5年は電池交換をした記憶がない。そして故障したことが一度もない! もしかすると、これは凄く高価な目覚し時計なのかもしれないと思うようになってきた。

 普通、電池交換をすると時間がリセットされてしまう(作業の間バックアップがないので、これは仕方がない)。そこで毎回、時間設定をしなければならなくなる。ただ困るのは、こういう事態になるのは数年に一度なので時間設定の手続きにいつまでも不案内のままで毎回手こずっていることである。時間設定の手順は、不注意で時間が変更されたりしないよう意図的に複雑な手順になっている。そのため、いつもやり方が分からず時間を食ってしまう。確か4つのボタンを同時に押しながら、もう一つの(少し離れた場所にある)ボタンを押すことによってトリガーが掛かる筈なのだが、これがなかなかうまくいかない。太い指の腹で小さなボタンを同時に4つ押すというのは結構難しいのである。詳しいやり方が本体底部に張り付けられた紙に書かれているのだが、時の経過とともに色褪せてきて、おまけに汚れが付いてしまって肝心のところが読み取れなくなってきている。そこで私は、確認した手順と方法(複数のボタンを同時に押すための自己流のコツ)とをその紙の上に手書きすることにした。

 こうして何年も愛用してきた我が大切な目覚し時計が、最近少し変なのである。あらぬ時に、突然『アラームは午前5時です』などと喋りだすようになってしまったのだ。『午前5時で‥‥』とぶつ切りになったり、『アラームは、アラームは、‥‥』と部分的に繰り返すこともある。認知症の兆候が出ているのかもしれない。

 事ここに至り、私はこの時計の寿命が そろそろ尽きる時期に近づきつつあることを悟ったのである。一体何年使い続けてきたのだろう。昔の記憶をたどっていくと、どうやら30年位になるようである。30年も使えば、そろそろ買い替えてもいいかなと思う。これと同じものが見つかったら買い替えよう。そう思ってウェッブ上でいろいろ調べてみると同じ製品の後継機種が見つかった。価格もそれほど高いものではない。しかし外装はまったく異なっている。モデルチェンジしてしまい同じものを見つけるのは困難であることが分かった。

 新しい機種に乗り換えても、多分同じように長持ちするとは思えない。最新の電子機器は性能は素晴らしいかもしれないが、長持ちしないのである。昔の機械式の構造のものは堅牢で長持ちするが、電子的な装置ではとても30年(*)はもたないであろう。
【注】(*)私めは高貴な「後期高齢者」であるからして、これから30年も長生きする予定も可能性もない。しかし不思議なもので、物を買うときは相変わらず長持ちするものを買いたいと思う。

(SEIKO TALKLINER)

 そうなると、この時計(機械式ではないが)を壊さないようにして使い続けた方が賢明であると、私めは判断したのである。

おぬし、たいした代物じゃのう。長生きせいよ