2019年10月4日金曜日

グラウンド


・Knuhsの書斎 から転載

── 河川敷のグラウンド


▼賑やかな河川敷
 私が日々のウオーキングで歩く時間の1/3は、多摩川のサイクリングロード上を歩く時間で占められている。家から25分程歩いて多摩川の堤に出ると、右岸に沿って伸びているサイクリングロードを川上に向かって歩くことにしている。遠くの山並み、東京方面のビル群、右手の河川敷などを見ながら歩く。程なく河川敷に設けられた運動施設がたくさん並んでいる区域に出る。子供にサッカーやフットサル等を教えるクラブである。これに参加する子供たちを車で送ってくる親御さんたちが多いので駐車場があり、指導を受ける子供達を親が見守る場所も用意されている。賑やかな場所だが、どちらかといえばスポーツを楽しむ側ではなくただ見物するだけの人たちが沢山いる場所でもある。

 そこを抜けると、以前は某電気メーカーが所有していた(正確には県から借りていた)グラウンドがある。ここにはテニスコートも併設されていて休日などは一番活気のある場所であった。電気メーカーの関連会社の社員たちが運動会を開催していたり、休日ともなれば必ず企業のテニス部員とおぼしき男女たちが集まり熱心にテニスの練習に励んでいたりする。この区域は、これまで「宿河原グラウンド」と呼ばれていて、グラウンドの向かい側には地方道路を挟んで電気メーカーの立派な研修所も設置されていた。

 グラウンド上には、三角柱でできた大きな看板が立っていて企業名とともに「宿河原グランド」と大書されていた。“グラウンド(Ground)”ではなく“グランド(Grand)”と書かれているので、私はこれを見る度にこの“些細な間違い”が気になって、気になって仕方がなかったのである。何しろ、修正されないまま数十年間もそのまま放置されていたのだから。

▼修正されるかもしれない
 しかし数年前、某電気メーカーに経営上の問題があってこの施設を手放すことになった。そのため、しばらくの間は運動をしに来る人がいない寂しい区域になってしまった。そして「宿河原グランド」の看板だけがそのまま残された。さすがに、管理者である某電気メーカーの名前だけは消されていたが。

 それが、昨年から渋谷のある学校法人がこの場所の権利を取得して教育の場として利用することになったらしい。グラウンドの整備にかなりの時間を掛けていたようで、整地し直して立派な野球場とサッカー競技場ができあがり、グリーンの芝を敷き詰めた立派なフィールドへと生まれ変わったのである。

 ウオーキングで通りかかる度に、私は昔の賑やかな区域に戻ることを期待してそれとなく観察していたのだが、「宿河原グランド」という例の看板だけはそのままに残されていた。その後私は、もはや看板のことは忘れてしまっていた。

 ところが、猛暑も峠を越した秋のある日、久しぶりにウオーキングの距離を伸ばして野球場の前を通り過ぎようとして、私は看板の文字が書き替えられていることに気が付いた。素晴らしい! さすが、教育に携わる人たちである。そういう細かいところは間違えないようである。



 私は、やっと長年の未解決問題が解決し、未完成だった我がウオーキングコースの整備がやっと完了したような気がして、すっきりした気持になったのだった。

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