2009年5月9日土曜日

叱られ方を知らない若者たち

 最近の新入社員教育研修では「叱って育てる」がキーワードになっているという。ゆとり教育の世代には「優秀だが、競争心に欠け、叱られ慣れていない」若者が多いからだそうである。私自身も、ここ数年教育現場にいて、確かにそれを感じてきた。最近の若者たちは、叱られることに慣れていない。だから、たまに叱られると予想外の反応を示す。

 私は講義中に、叱らなければならない場面になることがしばしばある。一般に、叱るには二通りの方法がある。一つは、叱る学生を一人決めて代表者として叱る。いわば一人に犠牲になってもらい、それ以外の学生たちは間接的に叱るのである。もう一つは、誰とは言わずに全員を叱る。当然、叱られる覚えのない学生も含まれるが、それは当然分かっていることである。
 ところが一人を代表して叱ると、それをやっているのは私だけではありませんとか、他にもやっている人がいるから叱ってほしい、叱らないのは一貫性に欠けているなどと不満を言ってくる。
 一方全員を叱ると、私はそんなことはしていないのに先生は一方的に決めつけていると不満を述べる。要するに、普段叱られた経験がないから、叱り方に二通りの方法があって、それを私が使い分けていることすらも知らないのである。

 これは、ゆとり教育による弊害というよりも、少子化による影響ではないかと思う。長年教育環境で過ごしてきた彼らは、学校側にとっては大切なお客様である。少子化傾向の強い昨今では、益々大切に扱わねばならない存在である。どんな些細な不満でも学校側は最大限対応してあげようと努力する。こうして彼らは普段からチヤホヤされて育ってきているのである。
 我々の世代は体罰など普通であったが、現在は“お客様”に対して体罰などもっての外である。理不尽な要求にも一生懸命に対応しなければならない。子供と親が一緒になって、学校側に不平不満を言い立てる。モンスターペアレントなどと言われている。彼らは社会人になって初めて、本格的に叱られることを経験する。しかし自分が長年過ごしてきた学校という環境が、極めて特異な世界であるという事実には気が付かない。そして入社後1か月くらいで耐えられなくなり、ゴールデンウィークの休み明けとともに出社しなくなってしまう。これを五月病という。

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